中川浄益
なかがわ じょうえき

中川浄益とは、金物師である中川家当主が、先代を継いで襲名する名前です。中川浄益は、茶道具の職人で、千家十職の1つでもあります。
初代の紹益が、制作したやかんを千利休に認められたことがきっかけで、茶道具を作るようになり、のちに千家十職として家業を継承することとなりました。
その後、十一代浄益まで金物師を生業とし、現在は当主不在のままとなっています。

ここでは、中川浄益がどのようにして千家十職となったのか、また代々引き継がれてきた技術の魅力について解説します。

中川浄益の系譜



系譜

生年-没年

幼名

続柄

初代紹益

1559年(永禄2年)-1622年(元和8年)

紹高

 

二代目浄益

1593年(天正20年)-1670年(寛文10年)

重高

初代紹益の長男

三代目浄益

1646年(正保3年)-1718年(享保3年)

重房

2代目浄益の長男

四代目浄益

1658年(明歴4年)-1761年(宝暦11年)

重忠

 

五代目浄益

1724年(享保9年)-1791年(寛政3年)

頼重

4代目浄益の三男

六代目浄益

1766年(明和3年)-1833年(天保3年)

頼方

5代目浄益の長男

七代目浄益

1796年(寛政8年)-1859年(安政5年)

頼実

6代目浄益の長男

八代目浄益

1830年(文政13年)-1877年(明治10年)

紹興

7代目の婿養子

九代目浄益

1849年(嘉永2年)-1911年(明治44年)

紹芳

8代目浄益の長男

十代目浄益

1880年(明治13年)-1940年(昭和15年)

紹心

9代目浄益の長男

十一代目浄益

1920年(大正9年)-2008年(平成20年)

紹真

10代目浄益の長男

初代のみ「紹益(じょうえき)」を名乗っているのは、当時京都で商人を営んでいた灰屋紹益と名前が同じだったため、二代目以降は「浄益」と改めた経緯があります。代々の中川浄益の中でも、三代目浄益は鋳物の名人として知られています。砂張(さはり)と呼ばれる銅に錫(すず)、銀、鉛を加えた合金で、鋳物を制作する技術を生み出しました。

十一代目浄益が亡くなったあとは、跡を継ぐ者はなく、現在は当主不在となっています。

中川浄益の功績


初代・中川紹益は、越後国(現在の新潟県)出身で、金物師の家系でした。天正時代の初めに、京都に出て武具の職人になったと考えられています。茶人・千利休の依頼で、やかんを制作したことから、茶道具を作り始めるようになりました。
のちに千家十職(せんけじっしょく)の一家として認められ、中川浄益は千家十職の金物師として、家業を継承することとなります。千家十職とは、三千家(表千家・裏千家・武者小路千家)に出入りする茶道具を作る職人を示す、10つの家元です。年代によって、10つ以上の家元が定められていたこともありますが、現在は十職となっています。
家業を立ち上げた初代に続き、二代目・中川浄益は、利休の息子である千宗旦(せんのそうたん)の茶道具を作りました。特に三代目は、困難と言われた砂張の製法を研究し、実現した鋳物の名人として有名です。

しかし家業は順調にはいかず、天明8年1月30日、五代目浄益のときに天明の大火によって、家伝や財産を焼失。七代目~九代目は、時代の流れにより、家業が振るいませんでした。十代目浄益のときに、第一次世界大戦が起こり、軍需によって再建し、十一代目に引き継がれています。

作品の特徴とその魅力


祖先は越後国にて、甲冑などの武具を作っていた金物師でしたが、初代浄益は茶道具を中心とした金工を家業としました。三代目が開発した砂張は、銅をもとに、錫や鉛、銀を加えた合金を使って、建水(けんすい)などの茶道具を作る技術です。

中川浄益は、金属を槌で叩いて加工する鍛造や、鋳型に金属を流し込んで加工する鋳造のほか、飾師(かざりし)としても有名でした。飾師とは、槌金と呼ばれる薄い金属板を打ち出して装飾を施す職人のことです。その精巧な作りが、茶人に人気だったと言われています。
その作品には、盆や建水、火箸などがあり、「〇誉浄益」との歴代の号が記されています。

歴史ある中川浄益の作品は貴重


中川浄益は、約460年前から続く金物師で、千家十職のうちの1つです。歴史ある職人家系で、十一代当主まで、その技法を継承し続けています。中川浄益の作品は、金属には見えない滑らかさと、精巧な細工が特徴です。
各代で代表作があり、時代の流れで逆境にあったときも、その家業を続けてきました。
十一代目以降は、当主不在のままですが、その作品は依然として価値が高く、貴重なものばかりです。

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