寺井直次
てらい なおじ

日本の伝統工芸の中でも古い歴史を持ち、代表格の一つとして「japan」と呼称される漆芸作品。

遠く縄文時代から利用されていたことが研究成果から判明しており、列島の歴史においても重要な工芸品であり続けているといえるでしょう。

漆の木から採取される樹液を塗り重ね、天然レジンの塗膜で器体を覆う技ですが、強度を高めるだけではなく研磨によって滑らかな光沢が得られることから独特の美を醸し出すことでも知られています。

そんな漆芸の中でも、模様を施すのにいくつかの技法が生み出されてきました。

金銀の薄板を貼る「平文(ひょうもん)」、貝殻などの薄片を埋め込む「螺鈿(らでん)」、金銀の箔を埋め込む「沈金(ちんきん)」、そして金粉や銀粉を未乾燥の漆に定着させて文様や文字を描く「蒔絵(まきえ)」などが挙げられます。

そのうち蒔絵の技法で人間国宝となった近現代漆芸家の一人に「寺井直次(てらいなおじ)」がいます。寺井は伝統技法をベースとしつつも、先進技術を駆使した新しい漆器や新技法の開発などに積極的に挑戦した作家でもありました。

本記事ではそんな寺井直次のプロフィールや生い立ちを概観しつつ、作品とその魅力についてご紹介します。

プロフィール


1912年(大正元年)‐1998年(平成10年)

大正から平成の時代に活躍した日本の漆芸家。アルミニウム製の素地を用いる「金胎漆器(きんたいしっき)」や鶏の卵の殻を使って白地を出す「卵殻技法」など、漆工芸において新技術を編み出しました。

重要無形文化財「蒔絵」の保持者として、人間国宝にも認定されています。

生い立ち


寺井直次は1912年(大正元年)12月1日、石川県金沢市の鍛冶職・金物商の家に生を受けました。少年時に漆芸に興味を抱き、1930年(昭和5年)に石川県立工業学校(現:石川県立工業高等学校)の漆工科描金部を卒業。その後東京美術学校(現:東京藝術大学)工芸科漆工部に入学し、松田権六・六角紫水・山崎覚太郎らの指導を受けました。

東京美術学校を1935年(昭和15年)に卒業した寺井はその後理化学研究所に勤務し、ここで電解処理を施したアルミニウムを素地とする「金胎漆器(きんたいしっき)」の研究開発を行います。1937年(昭和17年)には同所静岡工場へ工芸部長として赴任。当時25歳という若さであったことは寺井の技術者としての優秀さを推し量ることができる経歴の一つです。1945年(昭和20年)には激化する戦争で静岡が空襲に見舞われ、郷里の金沢に戻りましたが臨時召集を受けて軍に入隊。同年に終戦を迎えると理化学研究所を退職し、漆芸家としての活動を開始しました。

1948年(昭和23年)の第4回日展で特選を受賞し、1950年(昭和25年)には母校である石川県立工業高等学校漆工科の主任教諭に就任します。
1955年(昭和30年)の第11回日展で北斗賞を受賞。同年の第2回日本伝統工芸展で初めて入選し、以降1997年(平成9年)の第44回同展まで連続43回連続で入選するという記録を打ち立てます。

1956年(昭和31年)の第12回日展でも特選を受賞し、翌年日展会員として入会。1960年(昭和35年)には日本工芸会の理事に就任しました。1968年(昭和43年)に石川県立工業高等学校の教頭となり、同年に北國文化賞を受賞。その2年後には金沢市文化賞も受賞しています。
1972年(昭和47年)には石川県立輪島漆芸技術研修所の初代所長に就任しますが病気のため翌年辞職し、1974年(昭和49年)に初めて金胎漆器の作品を第22回日本伝統工芸展に出展しました。

1983年(昭和58年)に勲四等瑞宝章を受章、1985年(昭和60年)に重要無形文化財「蒔絵」の保持者として人間国宝の認定を受けています。
寺井は以降も精力的に制作活動や個展を行い、皇室用の器物も制作。

1998年(平成10年)3月21日、満86歳の生涯を閉じました。

寺井直次作品の特徴とその魅力


寺井直次の作品は端正で緊迫感のある、漆芸の伝統的な系譜を感じさせるものが多い印象があります。

ところがその一方で、前述のようにアルミニウムを器体として用いる漆器など、古来の技だけにとらわれることのない自由さも持ち合わせています。

また旧来の漆芸では白色の表現に限界があったとされますが、寺井は鶏などの卵の殻を細かく砕いて模様として貼り合わせ、これを研ぎ出すことで純白に近い文様を描写する「卵殻技法」を編み出しました。

こうした伝統と革新を自在に取り合わせる柔軟さが、寺井直次作品の大きな魅力の一つといえるでしょう。

漆芸技法の開拓者、寺井直次


漆芸家・寺井直次の事績を振り返る時、しばしば「開拓」という表現が用いられます。

これまで見てきたとおりに新しい技法の研究・開発に果敢な姿勢でチャレンジを続けてきた寺井は、まさに斯界の開拓者と呼ぶにふさわしい作家といえるでしょう。

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