亀文堂
きぶんどう

亀文堂は、1800年代初頭に、近江・能登川(現在の滋賀県東近江市能登川町)で発祥した鉄瓶製造業者です。
鉄瓶とは、茶の湯釜に取手と注ぎ口を付けた鉄製の急須で、特に富山県高岡市で作られていた高岡鉄瓶は、美術品としても高い評価を得ています。高岡鉄瓶の技術から派生した鉄瓶製造業者のなかで、特に有名なのが、龍文堂・亀文堂・蔵六・大國です。
ここでは、亀文堂を立ち上げた波多野正平や、亀文堂の歴史、その作品の特徴について、解説します。

亀文堂の読み方


亀文堂の読み方は、「きぶんどう」です。
亀文堂は、鋳金師(ちゅうきんし)・波多野正平が打ち立てた鉄瓶の製造業者で、波多野正平のことを亀文正平や初代亀文堂と表すこともあります。
また、波多野正平が作った作品を初代亀文と呼ぶこともあり、亀文堂の始まりの地、近江・能登川には、「日本亀文(にほんきぶん)」と銘が打たれている作品もあります。

亀文堂とは?


亀文堂は、高岡鉄瓶の技術から派生した鉄瓶製造技術を使って、鉄瓶を制作した鉄瓶製造業者です。
1624年に高岡鉄瓶が始まった場所・富山県高岡市は、もともと鋳物生産が盛んな地域でした。その高岡鉄瓶の蝋型鋳造技術を、京都で初めて確立させたのが龍文堂です。蝋型鋳造(ろうがたちゅうぞう)とは、蝋を使った鋳金技法で、その技術は現在、無形文化財に指定されています。
龍文堂で高岡鉄瓶の技法を学び、近江・能登川で鉄瓶制作を始めたのが、初代亀文堂・波多野正平でした。

亀文堂の歴史


亀文堂の始まりは、のちに初代亀文堂となる波多野正平が、龍文堂へ弟子入りしたことでした。
龍文堂の鉄瓶は、当時の京都では高級品されており、茶の流行に乗って非常に人気の高い作品を作っていました。波多野正平は、二代目龍文堂・四方安平に師事し、蝋型鋳造の技術を学びます。その後独立し、当時の近江・能登川に工房・亀文堂を開きました。
亀文堂の創業初期には、鉄瓶だけでなく、文具や銅器などの制作もおこなっていました。しかし、それまで高級品だった鉄瓶が庶民に普及した幕末以降は、蝋型鋳造の技法を使って、鉄瓶制作に力を入れるようになります。

既存の蝋型鋳造技法にとどまらず、銀を使った象嵌細工などを施し、高級品・美術品としての価値を高めていったのが、初代亀文堂の特徴です。
1982年に波多野正平が亡くなると、二代目・三代目に引き継がれていきますが、残念ながら二代目の記録はほとんど残っていません。三代目亀文堂・安次郎は、伝統的な鉄瓶ではなく、花器や置物、香炉が多かったとされています。初代亀文堂の作品ほど有名ではありませんが、精密な文様が施された銅器は、まさに亀文堂の技法を引き継いでいる作品と言えるでしょう。
昭和20年代に四代目亀文堂に引き継がれてからは、戦争などの世界情勢によって、高級鉄瓶の需要がなくなり、亀文堂の工房も閉じられてしまいました。

初代亀文堂・波多野正平とは?


亀文堂といえば、初代亀文堂・波多野正平の作品を指すことが一般的です。
ここでは、亀文堂を開いた波多野正平の生い立ちと、その弟・秦蔵六について説明します。

波多野正平の生い立ち


波多野正平が生まれたのは、1813年(文化10年)でした。実家は醸造業を営んでいましたが、波多野正平は家業を継ぐことなく、15歳で弟とともに龍文堂に弟子入りします。そのときに師事したのが、二代目龍文堂の四方安平です。
蝋型鋳造の技法を身に付けたあと、近江で独立して工房を開きました。しかし、頼山陽(らい さんよう)や頼三樹三郎(らい みきさぶろう)と交流があったため、安政の大獄で幽閉され、その後も地を転々とするなど、波乱万丈な人生を送った人物でもあります。
最後は、亀文堂を開いた近江・能登川に戻り、晩年まで鉄窯制作を続けました。

弟・秦蔵六


波多野正平の弟・秦蔵六は、兄とともに二代目龍文堂・四方安平に師事し、蝋型鋳造技法を学びました。その後、兄と同様に独立し、京都に工房を開きました。
京都の名工と呼ばれ、青銅器や鉄瓶など、多くの名作を作り、明治天皇の御璽(ぎょじ)を作ったことでも有名です。

作品の特徴とその魅力


亀文堂の作品は、蝋型鋳造の鉄瓶本体や摘みや弦に、繊細な銀の象嵌細工が施されている昭和以降の作品が、特にコレクターに人気があります。
また、初代亀文堂の作品は希少性が高く、より高値で取引がされることも特徴です。その人気は日本のみならず、中国での人気が高いとされています。人気の作品のため、模造品も多く出回っていますが、模造品には亀文堂の高い蝋型鋳造技法が見られません。

亀文堂の作品は現在も高い人気を誇る


亀文堂の作品は、鉄瓶だけでなく、花器や置物など、多岐に渡ります。初代亀文堂の作品が有名ですが、二代目~四代目の作品も、初代の技法を継いだ素晴らしい作品ばかりです。
近年は人気ゆえに、価格が高騰していて、模造品も多く出回っています。亀文堂の多くの作品には、特有の銘が記されていることが特徴です。
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